大人とのコミュニケーション能力が高い生徒ほど伸びる

 

多くの高校生や大学生と接して、いつも感じることは、大人とのコミュニケーション能力は若者にとって極めて重要だということです。その力が高い者ほど、着実に育っていくと思うのです。もっとも、それは人間の総合力の「ある側面」にすぎませんので、それがすべてであるという意味ではありません。しかし、相手が大人だからといって臆することなく、明るくフランクに自分の意見を述べたり、相手から大切な情報を聞き出したり、さらには対等に交渉することさえできる、実に頼もしい若者がいるのは事実です。対人関係において、「目上に臆することのない人間」は、どちらかというと「目下の人たちにも優しく細やかな気遣いができる人間」であることが多いと思います。

 

ところが残念なことに、私のまわりには、大人とのコミュニケーション能力が高い高校生はあまり見かけません。しかし、つたない会話でも彼らは必死に大人と話をし、自分にとっての糧になる情報を得ようとしているのです。つまり、たとえ上手ではないにせよ、気心の知れた大人となら、そして一生懸命話せば、コミュニケーション能力を補うことができることの証明になっているわけです。

 

そうは言っても、大人の社会に出たりした時には、仲間と気の置けない会話をするのとはわけがちがいます。豊富な話題、広い知識、大人のボキャブラリー、敬語、そしてウイットなど、求められるものはあまりに多く、疲れずに大人と話のできる若者は稀少な存在と言えるでしょう。慣れないことをするわけですから、疲れる方が当たり前ですね。

 

それでは、どうすれば大人とのコミュニケーション能力をアップすることができるのでしょうか?

 

言葉、話し方、接する姿勢や距離感などの基礎はすべて親から学ぶものです。ですから、大人とのコミュニケーション能力の習得は、家庭環境が一番大きな要因になっています。この場合、親が対話の模範になっているわけです。しかし、その子どもが接する大人は自分の親だけではなく、親戚や近所の人などいろいろな大人と接しているうちに自分のコミュニケーションの模範や理想が少しずつ変化していくのです。

 

その子どもの周囲にいる一人の大人として、上手なコミュニケーションの模範となるように接する。これは、とてもたいへんなことですので、大人としての責任は重大です。なぜなら、すばらしい大人に囲まれて育った子どもと、だらしない大人に囲まれて育った子どもが、同じように育つことなどないからです。これは誰しも認めることだと思います。要は、その子どもにどのような大人がどのように関わったかの集大成が、その子どもの持つ「大人とのコミュニケーション能力」に反映していくということなのです。

 

美しい言葉、力強い言葉、真実の言葉を使い、明るくフランクにコミュニケーションする模範の大人になりたい。お子さんの周囲をすべてそういった大人の集団にしていけば、必ず子どもたちのコミュニケーションも変わっていくと思うのです。自分の話し方を変えるだけでお子さんの話し方が思いの外早く変わる場合もあります。しかし、概してとても時間のかかることだと思いますので、とにかく性急にはならないように注意してください。

 

 

この記事を書いた人

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緒方克彦
担当科目:英語・国語
担当校:伊勢原校・成瀬校

理系が得意な私は医学部志望でしたが、小学校の教師になるために文系に転向して初等教育学科に進学。なぜか新聞社の内定をもらいましたが、選んだ道は塾講師。それから早30年。人生、何があるか分かりません。だから、若いうちは幅広く勉強することが大切だと思います。いろいろなことを吸収して、自分を磨きましょう。